23.おしえて負け犬の遠吠え:おしえて♪口笛は何故~遠くまで聞こえるの?♪ ♪あの雲は何故~私を待ってるのっ♪ ♪おし~えて!おじいさん♪ ♪おし~えて。おじいさんっ!♪ ♪お・し・え・て~~アルムの樅の木よっ♪ 「アルプスの少女『ハイジ』」の主題歌である。 今は亡き家内(ど・こ・か・で・生きてるって!!!)が好きだった歌である。 そして、無茶苦茶高かった『DVD全巻セット』を持って行っちまったなぁ・・・。 あ~あっ・・・。 決して、無っ茶苦茶高かった『DVD全巻セット』が惜しいのではない。 「ヤフー・オークションに出品したら5万円は固かったっ!」なんて、い・ち・ど・も・考えたことなどない。 ・・・は~ぁ。 「終点ですよっ!」 見知らぬ乗客に起こされてしまった。 酒も飲まずに列車の中で眠りこけてしまったのは始めてである。 その理由は・・・ 旅行っ。 宿屋は民宿に毛が生えたレベルだし・・・ 接客はビジネスホテルの方がマシってレベルだし・・・ でもメシは美味かった! 近江牛の『陶板焼き』 『岩魚の塩焼き』 『刺身(マグロ、ブリ、サーモン)』 ・・・ 小さな器に『古代米』なんてモンまで付いていた。 『近江牛(?)』は、スーパーマーケットの『国産牛(カルビ)』の方が旨いような気がするし・・・ 『刺身』は少し凍ってたような気もする。 でも、焼きたての『岩魚』は絶品だった。 「『鮎』は(頭から)丸ごと喰え!」 アタマゴナシに怒鳴りつける西原理恵子女史。 『恨ミシュラン』でウダウダと薀蓄(うんちく)を垂れるコータリンに向かって! 流石に『頭と尻尾』は喰えなかったが、『骨』は全っ然気にならなかった。 でも・・・ 『鮎』と『岩魚』ってオンナジで良いのだろうか? まあ、ドチラも『川魚』ってことで・・・。 全てにおいてアバウトな性格である・・・私は。 そして、旅館で普通に出てくる飯櫃。 その半分くらいのメシ。 私一人で、それ全部が無くなった。 だ・か・ら・・・全く眠れない! 腹が張って・・・。 『メシ(近江米)』が何より旨かった。 でも朝食の時も飯櫃全部を平らげてしまったのは少し意地汚いって気もしている。 なんせ『旅行』のお目当て、『陽明文庫』の説明の時なんか眠くって仕方がない。 「旧五摂家には其々に別の『呼び名』があります。」 「近衛家は『陽明(ようめい)』、九条家は『陶化(とうか)』、二条家は『銅駄(どうだ)』、一条家は『桃華(とうか)』、鷹司家は『楊梅(ようばい)』・・・。」 「近衛家だから『陽明文庫』ってこと。」 「『陽明学』とは全く関係ありません。』 文庫長名和修氏の説明の間に眠ってしまいそうになる。 隣に座った小母さんは一所懸命にメモしてるし・・・。 斜向かいに座った小父さんはテープに録音してるし・・・。 みんな教員クズレなのか? ババ&ジジになってから勉強して何になんだろう。 ・・・そうか。 彼岸(あっち)への土産なんだっ! 「先ず藤原北家の嫡子が近衛家に、そして三男が九条家を作り分裂しました。」 「そして九条家から二条家、一条家が出来て、近衛家から鷹司家が出来た。」 「この歴史的背景から、五摂家は、近衛家、九条家、二条家、一条家、鷹司家の順に、又は、近衛家、鷹司家、九条家、二条家、一条家の順に呼びます。」 「ドチラにしても近衛家が筆頭で・・・。」 冗談を交えながら話す名和文庫長の話は面白くない訳ではない。 唯、ミンナ知ってるような一般論ではある。 熱心に聴く40名の参加者の中で、私一人だけが別の世界に彷徨うって直前だった。 「『御文庫』の展示室にご案内します。」 名和文庫長の声が、私を此方の世界に戻してくれた。 展示室って言っても『御文庫』の中である。 「『紹介状』がないと誰も入れないよ!」って処である。 そして『御堂関白記(藤原道長の直筆の日記)』や『十巻本歌合』なんて、国宝の巻物4点が拡げられてガラスケースの中に鎮座している。 「『ガラス越しに』と『直接に』では文字の見え方が如何に異なるか感じてください。」 そう言いながら名和文庫長がガラスケースを開ける。 直接見たって、私には『何が書いてあるか』なんて全く判らない。 でも、事も無げに蛮勇を奮う、このオッサンはチョッと好きっ!かもしれない。 何気なく掛かっている『掛け軸』は『後水尾帝』と『後西帝』の御親筆である。 でも、何故『後西帝』なの? 「『後西天皇』はマイナーな天皇ですが、覚えやすい第111代目の天皇です。」 「そして『後西帝』は『後水尾帝』の皇子ですから、同じテーマを詠んだものを比較してください。本当に良く似てます。」 なんて名和文庫長はのたまう。 以前に日記にも書いたことがあるが、私にとって『後西帝』なんて此れ以上ない位に興味津々のお方である。 だが、名和文庫長は老婦人のグルービー達に囲まれて中々近づくことができない。 『ある老婦人』は別け判んない古文書の名前を次々に挙げては「如何して展示されないのか」なんて聞いている。 「そんなモンを展示しても喜ぶのは貴方くらいですよ」って言われてご満悦である。 妙齢なご婦人は2人だけ。 『御堂関白記(藤原道長の直筆の日記)』を見ながら、そのカタッポが言う。 「『この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なきと思へば』って有名な歌は何処に書いてあるんですか?」 はぁ。 「この拡げられている『御堂関白記』の時とは少し年代が違います。」 「公家の一人が、その歌を道長が詠ったって日記に書いていますが、道長自身は『和歌を詠った』としか記していません。」 当たり障りのない回答である。 幾ら道長の権勢が時の帝を超えようとも一応は臣下である。 『この世をば 我が世とぞ思ふ』なんて詠っただけでも大したもんだ。 フツウなら『謀反の疑い在り』ってことで死罪だろ? まあ、「自分に逆らう奴なんていない」って想いから詠っちまったんだろうが・・・。 「殺人者が『自分が人を殺した様子』を細かくテメエの日記に書いてる」ようなもんだ。 そんな証拠なんて自分自身で残す訳きゃねえだろうが~! 少しは考えろよ! テメエはメス猿か? 失礼。 貴女は『女のお猿さん』ですか?・・・チョッと可愛かったんで。 少し気が楽にはなった。 そして・・・。 『絶対にしちゃいけないっ!』 って考えたんだ・・・私も・・・一応は。 でも、『絶対にしちゃいけないっ!』ことなんかしちゃうじゃない・・・人間って! うん。うん。良くある話。 って誰に言い訳してんだ?私は。 そう、ツイ聞いちゃったんである。 「『後西天皇』に思い入れでもあるんですかっ?」 「大正15年に名前が変わった天皇ですよね?」 「其れまでは『後西院天皇』でしたっけ・・・。」 「『後西院天皇』って『院』の時には何て呼ばれてたんでしょうね?」 って。 ・・・。 「貴方、『オクリナ』ってご存知?」 「『院』の時は『院』としか呼ばれないのよっ!」 文庫長を取り巻く『老婦人のグルービー』のお一人が、そう教えてくれた。 「『後西院天皇』って在り得ませんよね?」 「私が言っている意味は判っていただけますよね?」 「怖い話ですよね。」 無視されて憮然としながら『老婦人のグルービー』のお一人が離れていく。 『御水尾天皇』の院号は『御水尾院』。 だったら『後西院天皇』の院号は『後西院院』だってのか? 『下らない知識』だけで『考える能力』がなきゃなんにもなんないだろうに。 このクソババァがっ! 心の中でリフレイン。 「私は『院』について其れほど考えたことがないので。」 って名和文庫長。 「近衛の古文書に書いてないってことは無いと思うんですが・・・。」 って私。 そして、何事も無かったように歩み去る名和文庫長。 『池のめだか』氏よろしく「ここまでにしてやるっ!」って気持ちの私。 やっぱり聞いちゃいけなかったのかな? それ以降、名和文庫長は私と少しもお話してくれなくなった。 そして、二十数年ぶりの『京弁当』と『お抹茶』を戴いて『会』はお開きに。 『雅な味』には既に馴染めなくなってしまった私。 そして慌ててJRに飛び乗って帰宅。 他の乗客に起こされる羽目になった訳である。 近衛家の『御文庫』を守る文庫長。 徳川幕府のした『横暴』なんて許せないんだろう。 だから、代々伝わる、数多い国宝級の文物の中から態々『後西天皇』御親筆の掛け軸を掛けた。 ホントのことは何を言わずに・・・。 『歴代天皇の内、お一人だけは生前から『後西院』と呼ばれ『死人』の扱いを受けてましたっ。』 なんて、死んでも口にできないよな!公家なら。 なんて私は勝手に思い込んでいる訳である。 ホントに『謎』が多い国だ。 でも・・・。 『知ってる人』が話さなきゃ誰も知ることなんて出来ない。 そんなことがある。 興味のある人間は私だけじゃないって思ってるんだが。 まあ、『下種の勘繰り』には違いないが。 「今の『国民の知る権利』なんて所詮は井戸端会議のスケベ根性じゃないかっ!」 なんて数回前の日記に書いた。 良いんだっ! 私が知った処で如何なる訳でもないってことぐらい判ってる。 でも・・・。 『スケベ根性』でも良いからっ! 知りたいことは知りたいんだ。 だ・か・ら・お・し・え・てっ! |